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家庭が第一!
そう言い切る愛妻家は
あれこれ気がつく現場のエース。

プロ野球選手になりたかった。子供の頃の夢の話ではない。
佐藤聡が、スポーツで生きていく道を諦めたのは数年前。スペースに入社して5年目、26歳のことだった。

兄の影響で小学1年生から始めた野球は、20年以上、佐藤の生活の全てだった。ポジションはピッチャー。かつて一緒のチームで戦っていたメンバーにはプロ球団で活躍している者もいる。
工業大学の建築学科に進んだ佐藤は、将来、野球の世界で生きていこうと考えていた。しかし大学4年の時に怪我をしてしまう。人生が変わった。

「今となっては良かったと思っています」

佐藤は真面目だ。スポーツに関わることを夢見ながらも、目の前の仕事に真摯に向き合った。しかし困ったことに、日々グラウンドを走り回っていた佐藤にとってデスクワークそのものが辛かった。

「じっと座って作業するという環境になかなか馴染めませんでした。建築学科を卒業はしていても、同期のみんなのようにデザインや建築を本気で勉強してきていないという劣等感もありました」

そんな佐藤は現場に出ると強かった。3年目には約3ヶ月にわたり金沢事務所に出張し仕事に打ち込んだ。そしてその年の夏には大阪「天王寺ミオ」のリニューアルにアサインされる。店舗の営業を続けながら毎晩工事を進め、12あるフロアを3ヶ月ごとに1フロアずつリニューアルしていくという億単位の巨大プロジェクト。特別編成チームの4人に選ばれた。

「部長を含む大先輩3人に囲まれた1年間の大阪生活。現場の発注業務や全体の調整役をしながらいろいろなことを教わりました。とても勉強になるとともに、この時に空間づくりの楽しさも味わいました。

施工担当の浅田さんに出会えたことも大きかったです。サササッと図面をその場で手描きする仕事ぶり、寡黙でダンディな人となりがかっこよくて。僕の目標になりました」

大阪の現場を無事終えて、再び金沢事務所に行くと「佐藤くん、この1年でめちゃくちゃ成長したね」と声をかけられた。「自分ではよくわかっていなかったんですが、以前の僕とは全く違っていたみたいで」。大阪での現場経験が佐藤を大きく成長させていた。

「僕は現場が性に合っているんです。オフィスで机に向かっているよりも、現場で体を動かしている方が断然楽しいです」

その後も、大阪・梅田駅併設施設、名古屋・名駅地下テナント施設、京都・駅前地下街をはじめ、150店舗以上のテナントを抱える商業施設など、大型リニューアル案件の現場には佐藤の姿があった。

「駅の併設施設では人の流れを保ちながら工事を行わなければいけなかったり、大型商業施設では一部を通常通りに営業しながら段階的にリニューアルを進めなければいけなかったりします。解体する、と、つくるが同時進行する現場は、段取りが鍵なんです。

隣の店に影響はないか、埃は舞わないか、天井裏の配線はどれがどの店のものでどう伝っているのか、生きている設備は切断されないか、重量のある棚を打ち付けたいけれど壁の向こうはどうなっているか、強度は大丈夫か。

ひとつひとつ懸念材料を潰していく細かい事前調整が、プロジェクトの成功を左右します。どれだけの事態をあらかじめ予測できるか、気がつけるかが勝負です」

佐藤は今、大型案件を担当する大所帯の部署に所属し、中堅選手として若手を指導する立場にある。

「世代も性別も異なるメンバーとのコミュニケーションの取り方、それぞれの相手に合わせた伝え方など、どうしたらいいか手探りですね」と現場を離れたチームマネージメントに苦戦中。

チーフになった今も、相変わらずオフィスはちょっと居心地が悪そうだ。

愛妻家で子煩悩の佐藤。仕事とプライベートははっきり区別するタイプで「仕事より家庭が大事です」と言い切る。

「平日は遅い時間まで働くことがあってもいいけれど、週末は家族との時間を死守します。年々任される仕事も増え、自分でも面白くなってきているのは事実。時間のやりくりができればもっとやりたい気持ちもあります。が、僕にとっては家庭が第一。この優先順位は譲れません」

夕方、オフィスを離れて楽しそうに電話をしている佐藤の姿があった。どうやら相手は奥さんだったらしい。

「イクメンと言ったら妻に怒られそうですが、愛妻家であることは間違いないですね」と照れ笑い。最近建てたマイホームまでは片道1時間半。今日も現場とオフィスを行き来し全力投球で仕事を終えて、愛する家族の元へと帰る。

○情報は2019年9月の取材時のものです

profile

佐藤 聡

Sou Sato

2012年、名古屋本部入社。3年目より、大型ショッピングモール案件で大阪に常駐。5年目、結婚し、働き方に転機。以降も梅田駅、名駅、京都駅の地下街をはじめ大型ショッピングモールの改修などを担当。岐阜県瑞穂市。

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