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職人たちとの絆が財産。
子育てしながら時短勤務で成果を出す
愛されるボス。

「飯島さんに会ったのは、たしか10年くらい前。この業界で25年以上、いろんな現場をやってきましたが、それまで女性が現場に入るのを見たことがありませんでした」

そう話してくれたのは、飯島と10年以上の付き合いになる木工職人の浅野さん。張り詰めたものづくりや施工の現場に飯島が姿を現すと、空気が和らぎ、仕事がスムーズに運ぶという。

現場は、職人、大工、工務店など多くの力が結集し空間を仕上げていくプロジェクトの最終ステージ。それを共にする彼らと飯島久美子の絆は強い。飯島がアサインする制作・施工の専門家集団は密かに「飯島ファミリー」と呼ばれている。

ファミリーのボス、飯島は言う。

「スペースは設計やデザインだけでなく、ものづくりまで請け負えるのがいいところです。空間づくりにはさまざまなパーツが必要で、陳列什器やカウンター、椅子やテーブル、扉や壁、装飾などを特注で作ることが多いです。きれいな納まりを考える必要があり、パートナーである職人さんたちの力が不可欠です」

「工場や現場にもよく行きます。足を運ばなくても仕事を進めることはできます。でも、顔を合わせ、直接想いを伝えることでクオリティがさらに上がりますし、細かな問題も未然に防げます。結果的に仕上がりもいいし効率もいい。それに、ものづくりの現場には常に新しい発見があって私のテンションも上がります!」

飯島は担当した店がオープンすると、プロジェクトを支えてくれた関係者に写真付きで必ず報告メールを送る。

「飯島さんからのメールを見て、最終的にこんな空間になったんだ!と嬉しくなります。私たちが現場を終えた段階では、いつもまだ商品が入っていませんから(笑)」と浅野さん。

飯島は今、ホテルのプロジェクトも手がけている。これまでの案件とは異なる新領域だ。高いクオリティが求められる現場をどう仕上げるか。飯島ファミリーの腕が試される。

もうひとつのファミリーで、飯島は二児の母である。

20代半ばは仕事に明け暮れる日々が続いた。会社を辞めていく同期も出てきた。「私はこのままいくのかな。結婚してもこの仕事続けられるかな」と不安を感じながらも駆け抜けた。やがて結婚し、31歳で出産。育児休業をとったが復帰することへの不安はあった。

「辞めるのはいつでもできる。とりあえずやれるとこまでやろう。チャレンジしよう」

そうして飯島の時短勤務が始まった。その後、2人目も出産し今は9時30分から17時30分という時短勤務を続けている。

「夕方に仕事を切り上げることに、私も周囲もはじめは戸惑いもありましたが、徐々に慣れていきました。クライアントとの窓口はやるけれど、実務はメンバーに任せます。時短で働くようになって、ペアやチームなど誰かと一緒に働くことを知りました」

飯島の時短勤務は、周囲にもいい作用があるようだ。

「飯島さんは本当に優しい上司で、すぐに自分の時間を犠牲にしてくれようとします。あとは私たちに任せて家族を優先してください、って思います。私たちもダラダラせず効率よく仕事しようと考えるようになりました」と部下の江原早咲が笑う。部内のムードの良さがうかがえる。

クライアントとのミーティングで、子育て経験が役立つ場面もあった。

「子ども服用品専門店の仕事で、売り場フロアの構成を検討していました。そもそも子育て中は時間がない上に、子供を連れての買い物は、子供が飽きてぐずる前にパッパと済ませるのが肝です。

そこで、売る側視点でアイテム別に並べるのではなく、パパママ視点で子供のサイズ別にゾーン分けすることを提案。これにはクライアントも大いに納得してくれました。

生活者としてのあらゆる経験が活かしていけるのがこの仕事の魅力のひとつです。週末、子供と公園で遊びながら、いつか公園とミックスする仕事をやるとしたら……と思いを馳せています。これから、店舗や施設だけでなく、領域を超えた空間づくりを考えていけたらいいですね」

○情報は2019年9月の取材時のものです

profile

飯島久美子

Kumiko Iijima

2005年、大阪本部入社。3年目、京阪電鉄の商業施設内のトイレ改修を手がける。アパレルや服飾雑貨の専門店を担当。7年目に結婚。2度の産休を経ながら、服飾雑貨店や子供用品専門店などに従事。兵庫県神戸市出身。

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