おだやかな笑顔の裏に
奇天烈を隠しもつ
無邪気なアイデアマン。

石黒 雄也
YUYA ISHIGURO 2008年入社

大学4年生の石黒雄也は、
スペースの最終面接にダンボールを貼り合わせた
大きなお手製ケースを下げてやってきた。
取り出したのは、
ショーウィンドウのディスプレイデザインの模型。
背面で何かごそごそやっている。
すると箱の中に風がそよいだ(ように見えた)。
作品の裏には、
8つのモーターがちょっと不恰好についていた。

「これは学生時代に作った
『この先にある風』という
コンペ作品です。
草をあしらった紙をモーターで順に揺らして、
見えない風を表現したくて。
当時家にあった
ミニ四駆のモーターを外してくっつけました。
ON/OFFも自動制御とかじゃなくて、
一個ずつ手でモーターのスイッチを入れていくという
アナログぶりが若い(笑)。
でも、何か動きのあるプレゼンがしたかったんです。
ただ作品集を持っていくだけではつまらないなと」

およそ10年ぶりの作品との対面に、
無邪気な笑顔があふれる。

石黒は一見クセがなさそうに見える。
が、そうでもない。
趣味を尋ねると「車です」とごく普通の答え。
しかし、よくよく聞けば、
愛車は一代限りで販売中止になった
知る人ぞ知るマイナー車、ホンダ・エディックス。
週末にはこれをカスタマイズして遊んでいるという。
「なんでエディックスにそれついてんの?みたいな、
見る人が見ればわかる
ちょっとしたパーツの差し替えとかが楽しい」
のだそう。
やることが通好みなのだ。

とにかく人とちょっと違うことが好き。
人を驚かせたい、楽しませたい、
意外なことをやってのけたいという思いが常にある。
ハンドメイドやカスタマイズも大の得意。
イメージしたものをあっという間に形にしていく。

そんなアイデアフルな発想力と造形力は、
展示ブースという仕事でいかんなく発揮されている。

「展示ブースとは、
ゲームショウやモーターショーのような
大規模な展示会で、
企業が自社製品を紹介する空間のことです。
展示会の会期はわずか数日間ですが、
企業にとっては年に数回しかないPRの場。
お祭りムードの会場の中で、いかに人を集めるか、
どうやって自分たちの魅力を伝えるかに
心血を注ぎます。

展示ブースの仕事は短期決戦。
わずか数週間でプランを練り上げ、
短期間で設営しないとならないため瞬発力も必要です。
ギリギリまで調整が続き大変ですが、
みんなでひとつのものをつくり上げるのは、
やっぱり楽しい。
単発だからこそアクロバティックなことに
挑戦できるのも展示ブースの魅力です」

このほかに石黒の仕事のなかには、
広告代理店が仕切る大規模プロジェクトの一員として
参加するものもある。
官公庁などの仕事だ。
そこでは、クライアントと
直接やりとりする店舗づくりや
ブースづくりとは
また違ったセンスが必要とされる。

「代理店が声をかけて集まった
さまざまな会社のメンバーが
ひとつのチームとなり仕事が進みます。
クライアントの話を直接聞けるとも限らず、
オリエンで聞いたキーワードを手掛かりに
真意を汲み取ります。

そうして各社が持ち寄ったアイデアを、
間に入っている代理店の想いも汲んでブレンドし、
形に落とし込んでいくのが役目。
バランス感覚が不可欠ですし、登場人物が多いなか、
空間づくりのプロとして
しっかり意見することも大事です。
代理店とクライアント。
2つの山を越えながらゴールを目指していきます」

アイデアと瞬発力の展示ブース、
バランス感覚と粘り強さの代理店案件。
石黒が秘める多彩な能力が、
幅広い仕事を可能にしている。

あえていうなら石黒に足りないのは言語力なのか?
と思う場面に出くわした。

後輩の山田夏輝との展示ブースのミーティング。
2人は積み木を動かしながら
「あれをシュッとして、こっちはピ、ピ、ピで。
いや、パーっがいいかな」と
不思議な会話を交わしている。
「山田くんは誰よりも僕の言っていることを
理解してくれる人です」。
本当か、冗談か。
擬音だけで十分コミュニケーションが
成り立っているのだと、
石黒は楽しそうに笑うばかりだ。

そして「これもひとつの空間です」と、
ふと両手で小さな輪をつくった。

「空間をつくる、
というと人がいる大きな箱のような空間を
思い浮かべるかもしれませんが、
僕らのまわりにはいろんな空間があります。
空間というものを
もっと柔軟に捉えていいと思っています。

例えば、小さな箱を頭にかぶる、
箱の中に頭を突っ込む。
そんなアクションも、ひとつの空間づくりです。
思わずクスッと笑っちゃうような面白い空間づくりを
続けていきたいですね」

どうやら最後の発言は本心のよう。
石黒がつくり出す空間がますます楽しみになった。

スペース社員のある1日の
スケジュールをのぞいてみる

PRIVATE

自宅には専用カゴに紙やすりをストック。
120番から1500番まで揃いますが、
お気に入りはほどよい粗さの400番!
ドイツでは工場プラントを
そのまま移築した展示会場で展示会を開催。
海外の展示ではダイナミックさに圧倒されます。
愛車のHONDAエディックスは2台目。
10年乗っています。
週末にひとりで大阪の第七埠頭まで行き、カスタム部分を撮影。
内装も外装もすべて自分で計画した
シンプルながらこだわりいっぱいのマイホーム。
軒下のオイル塗りは自分でやりました。
学生時代のアート作品。私たちを取り巻く言語や会話を具現化。
人がかぶって完成しますがその姿はちょっとシュールです(笑)。

石黒 雄也/ YUYA ISHIGURO

2008年、名古屋本部入社。
大型ショッピングモールに携わりながら、
5年目には海外案件も担当。
7年目から展示ブースの仕事に従事したのが転機。
8年目より、広告代理店の案件なども手がける。
愛知県稲沢市出身。
INDEX