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いまが一番充実している!
晴ればれ笑う二児の母は
設計に長けたジェネラリスト。

二度の産休を経て働き続ける岡井香保里は断言する。
「いまが人生でいちばん楽しいです!」
それは、決して週末のPTAバレーボールが楽しいから、だけではない。「設計部」という愛すべき部署があるからだ。

岡井が所属する設計部は、かつて「WSD室/ウーマンサポートデザイン」という名前だった。そこは、育児休暇から復帰した女性たちが活躍できるようにと2011年に新設された。

スペースでは、クライアントごとにチームを組み、営業(進行管理)、デザイン、設計、積算(予算管理)、制作、施工(現場工事)まで、空間づくりの全工程を行う。誰もが入社して数年でこれら全ての経験を重ね、全国を飛び回る。「積算は苦手です」と笑う岡井も、なんでもできるジェネラリストだ。

「入社してからの数年間は、本当に忙しい日々でした。29歳で結婚しましたが、結婚式の3日前まで泊りがけの現場チェックで連日深夜帰宅。夫は理解があるものの、私のなかでは、この仕事は子供が生まれるまでだな、と思っていました」

そして結婚から数年後、その時がやってきた。すると偶然にも、岡井と仲のいい同期や先輩の女性4人がほぼ同時期に出産を迎えることがわかった。現場で活躍していた優秀な女性たちが第一線を退くことになる。仕事が嫌で辞めるわけではないが、続けるには不安がありすぎた。そこで会社は育児と仕事を両立できる部署であるWSD室を設立。その責任者として一児の母であった渡辺千賀を起用した。

「尊敬する大先輩の千賀さんが『みんなが復職できるよう、子育てしながら働き続けられる部署をつくるから』と言ってくれたんです。それならば戻ろう、戻りたい、と思いました」

渡辺は約束通り新しい部署を立ち上げた。泊りがけの出張や時間が読めない現場仕事は担わず、設計を中心としたオフィス業務で空間づくりに貢献できる女性だけのチームだ。

岡井らは、時間と戦いながら、お互い助け合い突発的な業務にも対応していった。女性活躍や働き方改革が叫ばれる前のこと。きっちり仕事をすることが、いま以上に意味をもっていた。
「営業部のサポートやルーティーンな作図作業だけをする部署と思われたくない」そんな気概が、いつしか「ウーマンサポートデザイン」を設計の専門チームへと変えていった。

ある日、岡井に「チーズピゲ」という静岡発のクッキーチーズサンド専門店のプロジェクトが舞い込んだ。
地元の仲良し3人組の女性が立ち上げた人気店が、初めて大きな商業施設に出店するという。当時入社2年目の総合職、小泉由羽とタッグを組むことになった。

初対面だった2人は、一緒に静岡へチーズサンドを食べに行くことから始めた。
「若い世代と一緒に仕事をするのは刺激的でした」と岡井が嬉しそうに当時を振り返る。

小泉にとっては初めて主担当を任された仕事。
「当時の私には、熱い想いはあっても、何をどう形にしていけばいいのかがわかりませんでした。とりあえず、こういうことがしたいんです……と岡井さんに相談する。そうすると空間が具体的に立ち上がっていく。すごいと思いました。

設計のやり方からプレゼン術、限られた時間で効率よく仕事を進める働き方まで教えてもらいました。岡井さんは憧れの先輩です」

一方の岡井は「この経験を通じて、自分が設計図面を引く以外に、後輩を育てるという役を果たせることに気がつきました」

部署の垣根を越えたタッグが、双方に、想像以上に、いい影響をもたらした。そしてプロジェクトは大成功を収めた。

「チーズピゲ」プロジェクトについては、ぜひこちらも覗いてみてほしい。小泉の当時の不安と奮闘ぶりに胸が熱くなる。

「出産を機に仕事を諦めなくてよかった。会社に戻ってよかったです。復職してこれほど充実した仕事ができるとは思っていませんでした。設計部がある限り私は何度でもこの会社に戻ってきたいと思います。もっと積極的に若手とも一緒に仕事をしていきたいですね。

そして、設計部をもっと魅力的な存在にしたい。育休明けや時短勤務ということに関わらず、設計がしたいから設計部に入りたい!と思ってもらえたら嬉しいです」

岡井ははつらつと笑う。

○情報は2019年9月の取材時のものです

profile

岡井香保里

Kahori Okai

2003年、名古屋本部入社。デザイン室、営業部を経て設計業務に従事。6年目で結婚。10年目、産休明けの設計部が転機。洋菓子店、宝石店など女性目線の店舗、音楽教室や子どもスポーツジムなどキッズ案件を数多く担当。高知県高知市出身。

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